ランゲルハンス細胞組織球症(Langerhans cell histiocytosis:LCH)は、単球・マクロファージ・樹状細胞に由来する細胞が全身の組織や臓器に集簇することを特徴とする組織球症(Histiocytosis)の中で、最多の疾患である。LCHという疾患名は1980年代になり初めて登場したものであり、それまでは「好酸球性肉芽腫症(eosinophilic granuloma: EG)」「Hand-Schüller-Christian病(HSC)」「Letterer-Siwe病(LS)」、あるいは「Histiocytosi X」という疾患名が用いられてきた。現在では、LCHの細胞起源は、骨髄中の未熟樹状細胞であることが明らかとなっている。さらに、BRAF V600EなどのMAPK経路の遺伝子異常と、それに伴うoncogene-induced senescenceによる組織へのLCH細胞の集簇と炎症細胞によるサイトカイン・ケモカイン産生による組織破壊の2つの特徴を有しており、現在では「炎症性骨髄腫瘍“Inflammatory myeloid neoplasm”」として認識されている。
詳しくはこちらランゲルハンス細胞組織球症(LCH)についてHistiocytosis-NDに関する報告はこれまでLCHに合併する神経変性症(LCH-ND)に関するものがほとんどであり、LCH-NDについてまとめます。
LCHには様々な晩期合併症(不可逆性病変)を認めることが知られています。最も有名なのは中枢性尿崩症ですが、その他にも成長ホルモン分泌不全などの下垂体前葉機能低下症を認めることもあります。中枢神経変性症(LCH-ND)も晩期合併症(不可逆性病変)の一つであり、日本の小児LCH症例の追跡調査からはLCH全体の6%ほどに合併することが知られています。
LCHに認められた晩期合併症(不可逆性病変)
LCH-NDはLCH発症から数年経過した後に発症することが知られており、なかにはLCH発症から10年以上経過してから発症することもあります。典型的な症例では、LCHが発症した数年後に頭部MRIで後述するようなLCH-NDに特徴的な画像異常が出現し、その数年後に神経症状が出現します。
LCH-NDの発症時期
LCH-NDの発症までの経過
LCH-NDを合併するリスクとしては以下の3つが挙げられます。
中枢神経リスク部位
LCH-NDは頭部MRIの画像異常のみを認める「放射線学的LCH-ND(radiological LCH-ND, rLCH-ND)」と、神経症状を伴う「神経学的LCH-ND(clinical LCH-ND, cLCH-ND)」に分類されます。海外では、rLCH-NDを“LCH-associated abnormal CNS imaging(LACI)”、cLCH-NDを“LCH-associated abnormal CNS symptoms(LACS)”と呼んでいます。
LCH-NDの分類
LCH-NDに特徴的な画像所見は頭部MRIで、「T1強調画像・T2強調画像での左右対称性の異常信号領域が小脳歯状核・基底核・脳幹部に認められる事」です。この画像異常は年単位で悪化し、小脳萎縮や液状変性に至ることが知られています。
LCH-NDの画像所見
LCH-NDの神経症状で最も多く認められる症状は、小脳性運動失調症状です。小脳は体のバランスをとるために重要な役割を果たしており、ふらつきや目眩を伴う歩行障害、箸が使いにくい、文字が書きにくい、呂律が回らないなどの症状が起こります。その他にも、学習障害や性格変化などの高次脳機能障害を伴う事もあり、その症状は非常に幅広いことが知られています。LCH-NDの神経症状の評価にはEDSSスコアやSARAスコアが使用されることもありますが、確立した評価方法は定まっていません。
LCH-NDに伴う小脳症状
LCH-NDの診断はMRIと臨床症状によって行われますが、LCH-NDの診断や治療効果を判定するためのバイオマーカーとして以下のものが期待されています。
現時点ではLCH-NDに対する治療は確立しておらず、以下のような治療がこれまでに実施されています。最近ではBRAF/MEK阻害剤による治療効果が報告されており、今後のLCH-NDに対する治療法の確立が期待されています。
本研究は、AMEDの課題番号JP23ek0109635の支援を受けた。